多くの事業者が望んでいるように、化石ガスネットワークに最大20%の水素を混合すると、調理器具やボイラーなどの一般的な家庭用電化製品からの水素漏れが大幅に増加し、そもそも高価な水素を使用することによる気候へのメリットが消滅してしまう可能性があることが、実験室でのテストで明らかになった。
環境非営利団体「Environmental Coalition on Standards(エコス)」の依頼で英国の認定研究所(査読なし)で行われたテストでは、通常の家庭環境下で使用した場合、メタンに20%の水素を混合すると、化石ガスのみを使用した場合に比べて家庭用ガスコンロからのガス漏れが2倍以上になることが判明した。
エナーテック・インターナショナルの英国科学者らがテストしたボイラーでは、排出量が平均で44%増加した。
試験によると、漏洩率はわずか0.7%で、ほとんどの家庭で毎日発生する可能性が高いが、EUの全家庭に適用した場合、年間574,538トンの二酸化炭素に相当する温室効果ガスの追加排出量が発生、英国では155,755トンとなり、それぞれ化石燃料で動く自動車30万台と84,000台の排出量に相当する。
重要なのは、ガスに水素を 20% 混合することで得られる気候へのメリット (化石ガスに比べて水素の体積エネルギー密度が低いため、排出量が7% 削減されると推定される) が、漏洩によって事実上消滅してしまうことを意味する。
実験には英国の大手小売店で購入した新品の電化製品が使用され、漏れは圧力損失によって測定された。テストは冷間(電化製品を室温でオフにしたもの)と熱間(電化製品を最初に加熱し、その後オフの状態でテストしたもの)の両方で実施されたが、Ecos は冷間テストのより保守的な結果のみを発表した。
6 つのモデルの調理器具は、水素混合の場合、1 時間あたり平均 2.7 ミリバールの圧力が低下したが、メタン単独の場合は 1 時間あたり 1.1 ミリバールで、その 2.4 倍の速さであった。
また、テストされたボイラーでは、水素混合物の漏れがガス使用時の1時間当たり2.7ミリバールと比較して、平均3.8ミリバールに増加しました。
「再生可能水素は、重工業、国際海運、長距離航空の脱炭素化に役立つ可能性は高いが、健康、安全、環境、コストの問題が山積しており、家庭にはふさわしくない」とエコス プログラム マネージャーのマルコ グリッパ氏は言う。「すでに明確な勝者がいるのに、なぜこの実現不可能な解決策にこだわる必要があるのか。家庭環境においては、電気で動くヒート ポンプや電磁調理器の方が、ガスよりもクリーンで健康的、かつ安全な代替手段である」
先週、 EUは水素・ガス脱炭素化パッケージを可決した。このパッケージは、ガスネットワーク事業者に最大5%の水素の混合を受け入れることを義務付け、送電網に入る水素と再生可能ガスの関税を75%割引するものだ。しかし、EUは、このようにして使用される分子は、家庭用暖房ではなく、産業用脱炭素化に使用するよう求めている。
英国政府は、家庭用暖房に水素を導入する計画をほぼ断念したが、スコットランドのファイフ自治体で物議を醸している水素家庭用暖房の試験にはまだ資金を提供している。
また、水素混合は英国の実質ゼロへの移行において限定的かつ一時的な役割しか果たさないとウェストミンスターは昨年述べた。
ガス供給業者は、安全上の懸念なく自社のガス供給網は最大20%の水素を処理できるとよく言うが、 スペインのガス協会セディガスは昨年、そのような混合にはスペインだけで7億300万ユーロのインフラ改修が必要になると述べた。
メタンは20年間で二酸化炭素の84~86倍の強力な温室効果ガスであり、一方水素自体は間接的な温室効果ガスであり、20年間で二酸化炭素の約36倍の強力な温室効果ガスである。