小さな水素社会の実現を目指す
小さな水素社会の実現を目指す
インタビュー
李 顕一
Founder, CEO

日本、台湾、韓国の血を受け継ぎ、米国で学生時代を過ごし、福島の地から世界的な先端技術事業に挑戦する男は、幼少からのレーシングカーへの想いを着実に実現してきた、夢ある現実主義者。


【Q1】OKUMA DRONEが提唱する、「小さな水素社会」がどのようなものか、それがなぜ、産業界に必要なことか、教えてください。


小さな水素社会は1kW〜3kW程度の水素を用いた発電装置や発動機の実用化を目指すこと指しています。
この領域は定置用の非常用発電装置やドローンやロボットなどの移動体に搭載する電源として用いる事を想定しています。
大きな水素社会は自動車や船舶、飛行機などを動かすことが出来る水素を用いた装置を指します。
大きな水素社会は大手企業が中心に製品開発やインフラ整備を進めているのに対し、小さな水素社会は製品開発もインフラ整備も全く進んでいません。
小さな水素社会を実現する事は、国内の水素利用の裾野を広げるにあたり、とても重要なテーマだと考えています。


【Q2】「小さな水素社会」の有益性に気づいたきっかけ、経緯についてお知らせください。


昨年度は福島県の実用化補助金に採択され、その事業で積載量40kgの大型ドローンの開発を行いました。
その際に用いた海外製の水素燃料電池が特定の温度条件で正常に機能しないという問題が発生しました。しかし、メーカーに問い合わせてもその解決方法について回答を得ることは出来ず試験を中断せざる得ない状況になりました。

また、水素の入手方法も確立しておらず、費用が高く、納期も長いという課題にぶつかりました。これでは、小規模の水素利用が広がることは難しく、市場が成長する事はありません。
我々が国産初の小型水素燃料セルスタックを製造し、小規模水素利用が可能なインフラの構築が出来れば、水素利用促進に繋がり、国内の水素社会実現に大きく貢献できると考えています。


【Q3】「小さな水素社会」の有益性は理解できました。それを推進してゆく中で、OKUMA DRONEは、どのように収益を上げてゆきますか?中心的事業をご説明ください。


当社は1kW〜3kWの小型の国産水素燃料セルスタックの開発とそれを用いた小型発電装置を開発します。
利用シーンとしては、今までエンジン発電機では不可能であった室内での非常用電源としての利用や騒音や排気ガスがクレームの対象となっていた工事現場のエンジン発電機の置換えなどが、主な事業になって行くと考えています。
また、水素供給インフラに対する課題も様々な企業や協議会と連携し、コンソーシアムを組成していく事を考えています。



【Q4】これまで取り組んできたドローン事業と、これから取り組む「小さな水素」関連事業と、どのようなバランス、比率で事業推進されますか?また、そこにシナジーは求めますか?


当社は引き続き、ドローンを用いて社会課題の解決をしていきます。一方で小さな水素関連事業の実現はドローンの航続距離を伸ばすアイテムとして密接に関係している為、50:50の比率で事業推進していきます。


【Q5】「小さな水素社会」実現に向けた、ロードマップやステップはどのようなものになりますか?


2024年は国産初の小型水素燃料セルスタックと小型発電装置のプロトタイプを開発します。
2025年は大幅にコストを抑えるための量産技術の確立を目指します。
また、開発と並行して2024年には小規模水素利用サプライチェーンの実現に向けたコンソーシアムを組成し、将来の水素供給インフラの実現を目指します。
そして、2026年には地元大熊町において生産工場を建設し量産体制を確立し、2027年から国内および海外向けの販売を開始します。


【Q6】李代表の、子供の頃や学生時代のことについて、少し話していただけますか?


小学校の頃からレーシングカーが好きで、よく技術室に潜り込んで、小さなレーシングカーを手作りで作っていました。中学生の時はワンダーフォーゲル部と生徒会長も経験しました。高校生の時はその当時高校日本代表のコーチをしていた先生が母校に在籍していたこともありラグビー部に入りました。そして、大学では小学生の頃の夢であったレーシングカーに関わる仕事がしたいと思い、米国の大学に行き、機械工学を勉強しました。


【Q7】李代表が、人生で影響を受けた人物や書籍、できごとなどについて、教えてください。


私の祖父は第二次世界大戦中に台湾の併合を機に日本に移住しました。中卒の学歴しか無かった祖父は飲食業から中古車販売業、ホテル業やテナント業など様々なビジネスをしてきました。日本が貧しかった時代に、外国人として成功を収めることは相当苦労したと思います。私はそんな逆境にくじけることなく突き進んだ祖父の背中を見て育ちました。私もそんな祖父に負けないようなビジネスマンになりたいと常に思っています。


【Q8】最後に。これからの日本の産業界にとって、OKUMA DRONEが存在した方が良いことを、読者に伝えてください。


日本の産業界にとって、海外からの輸入に頼る化石燃料の利用割合の縮小は重要なテーマであると考えています。また、二酸化炭素排出量の削減についても、グリーン水素利用はその大きな役割を担っていると考えています。その為、OKUMA DRONEは小さな水素社会の実現も水素利用促進において重要なテーマだと考えており、このテーマをOKUMA DRONEが中心となって実現します。