日本の石油会社エネオスは、オーストラリアのクイーンズランド州にある新型電解装置に2億豪ドル(1億3000万ドル)を投資することを約束した。この電解装置は、水とガソリンに含まれるトルエンと呼ばれる化学物質から、液体有機水素キャリアであるメチルシクロヘキサン(MCH)を直接生成することができる。
同社は今年1月、クイーンズランド州に150kWのパイロットプラント「ダイレクトMCH」を設置し、水(H 2 O)とトルエン(C 7 H 8 )を一段階で酸素(O 2 )とMCH(C 7 H 14 )に変換する技術を実証していた。
MCH は無色透明の液体で、他の炭化水素と同様の特性を持っているため、石油産業の標準的な設備を使用して貯蔵および輸送することができます。これは、原理的には、マイナス 253 ℃ の温度を必要とする毒性の高いアンモニアや液体H2 を輸送するよりもはるかに魅力的な提案です。
その後、MCH は目的地で高温触媒プロセスによりトルエンと H 2に戻され、トルエンは再利用のために生産現場に戻されます。
試験の一環として、クイーンズランド州のパイロットプラントからMCHの試験輸送品が日本に送られ、燃料電池車のタンクに充填するために使用された。
新工場は1日あたり680kgの水素相当を生産できる約5MWの電気分解能力を備え、2026年に稼働を開始する予定だ。
建設は来年開始される予定で、ブリスベン港近くのBP製油所跡地の約6,000平方メートルの土地が工場用に確保される。
このプロジェクトは、千代田化工建設、住友電気工業、凸版印刷、AGCといった日本企業と、GPAエンジニアリングやGRPSなどブリスベンを拠点とする企業との提携により建設される。
エネオスのMCHの製造と出荷の取り組みは、大規模な水素サプライチェーンの開発に総額3150億円(21億ドル)の予算を計上している日本政府機関、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託を受けたものである。
MCH の欠点は、アンモニアほど致命的ではないものの、摂取したり吸入したりすると人間に有害であり、水生生物に対して極めて有毒で、流出した場合には長期にわたる影響を及ぼすことです。
さらに、MCH をトルエンとガス状 H 2に戻すのはエネルギーを大量に消費するプロセスであり、さらにトルエンは再利用のために生産現場に戻す必要があるため、これらすべてが水素のコストと炭素強度を大幅に増加させる可能性があります。